「永遠の輝き」なんてキャッチフレーズで知られるダイヤモンド。
ただ,こいつの正体は地下深くのマグマで高熱と強力な圧力で作られた鉱石。
要するに透明な炭。
ただこの炭が,恋人への愛の結晶となるのにも,紛争を起こし西アフリカの小さい国の平均寿命を35歳で終わらせてしまうのにも,理由がある。
今の科学技術ではダイヤモンドくらい人工で作れるし,透明で輝くものは他にもたくさんあるはずなのに,なぜか?
鑑定書があるからだ。
もっと言ってしまえば,鑑定員のおっさんの眼が良すぎるからだ。
彼はなかなか厳しいらしく,色やら形やらにこだわって,その炭のランクをつけてしまう。
そのおっさんの「NO」の一言で,ほとんどのダイヤモンドの行き先はショウ・ウィンドウから工事現場にシフトされる。
コンクリートやガラスを切る道具にされたり,レコード針の先っちょにつけられたりする。
ただどちらにしろ,どんどん削られてなくなるのがオチだ。
そのおっさんに認めてもらうため必死で,宝石屋サンは世界中に穴を掘り続ける。
最終的におっさんに認められた小さな炭は,銃を構えた兄ちゃんたちに囲まれて,スポットライトを当てられる。
そしてそれを見た女の子はダイヤモンド以上に瞳を輝かせる。
その瞳にヤられた男たちは,給料3か月分をその炭と鑑定書に交換して,永遠の愛を誓う。
どどのつまり,最終的に人の愛の重さを量れるのは,虫眼鏡を抱えたおっさんの両目だってことになる。
そういえば,遺骨をメモリアル・ダイヤモンドにして,遺族に売るというサービスがあった。
もしメモリアル・ダイヤをおっさんに鑑定してもらったらどうなるんだろう?
愛だけでなく,人間をもランク付けできるようになるわけだ。
おっさんたちは,神様の仕事でさえも代行できるようになった。
ダイヤモンドよりもそのおっさんの眼球が欲しくなる。